長崎地方裁判所佐世保支部 昭和59年(ワ)195号 判決 1985年6月19日
原告
鹿毛進
右訴訟代理人
山田富康
被告
井上守道
主文
一 被告は原告に対し金一、六七六万二、〇〇〇円およびこれに対する昭和六〇年一月一二日から右完済まで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は被告の負担とする。
四 この判決は仮に執行することができる。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一(原告) 附帯請求の割合を「年六分」とするほか主文一、三項同旨の判決及び仮執行宣言
二(被告) 請求棄却、訴訟費用原告負担の判決
第二 当事者の主張
一(請求原因)
1 九州自動販売機株式会社(以下「自販会社」と略称する)は別表の(一)欄記載のとおりの取引をした。
2 原告と被告とは右各契約日に契約の相手方に対し連帯保証をした。
3 原告は右保証契約にもとづき別表の(二)欄記載のとおり、自販会社が別表(一)欄記載の各契約の相手方に対して負担していた残債務を全部弁済した。
4 原告と被告とは右連帯保証をするに際し負担部分の定めをしなかつたけれどもその割合は各二分の一宛とみるべきである。
5 よつて、原告は被告に対し右代位弁済額の二分の一に相当する金一六七六万二、〇〇〇円(一、〇〇〇円未満切捨て)及びこれに対する各弁済日の後日である昭和六〇年一月一二日から完済まで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。
6(法律上の主張)
本件保証は、商人である主債務者の委託に基づく主債務者の営業のためにするものであるから、保証委託契約の当事者双方に商法の規定が適用され、本件求償権が保証委託契約の履行として、主債務者にかわって弁済したことによつて発生するものであるから、本件求償権は商法五二二条のいわゆる商事債権(最判昭和四二年一〇月六日民集二一巻八号二〇五一頁)として商法五一四条が適用されると解すべきである。
二(請求原因の認否)
代位弁済金額は不知、その余の事実はすべて認める。
三(抗弁)
1 原告と被告とは幼少の頃からの友人であり昭和四二年頃原告は医師、被告は株式会社長崎マツダの管理職の地位にあつた。
2 被告は原告の資金等の援助をえて昭和四三年七月に有限会社中央ホンダ販売を設立し、その後その発展として昭和四五年九月自販会社を設立し、実際上の運営は専ら被告が担当していたが原告は資金面、取引先の開発その他主要部分に関与していた。
3 原告は突然昭和五四年一一月一三日頃自販会社の金融機関その他主要取引先に対し自己の連帯保証を取消す旨の通告をなした。
4 被告はその頃これを知つて驚き原告に対しその真意を問い、その結果の重大性を訴えたところ、原告は、自己の連帯保証した債務については自己が責任を持つて清算し被告に負担をかけないと約束した。
5 自販会社は右の通告のためその頃事実上倒産した。
6 よつて、被告は原告の請求に応じられない。
四(抗弁に対する認否)
抗弁1ないし3及び5の事実は認めるが同4の事実は否認する。
第三 証拠関係<省略>
理由
一原告の弁済額を除く請求原因事実及び抗弁1ないし3、5の各事実はいずれも当事者間に争いがなく、<証拠>によると原告主張のとおりの金額を原告において弁済したことが認められる。しかし、抗弁4の事実を証するに足りる証拠はない。
二そこで、右事実にもとづいて原告の法律上の主張について検討する。
主たる債務が商行為によつて生じたものであり、かつ保証の委託が商行為たる性質をもつものであつても、弁済自体は商行為でないばかりでなく、本件共同保証人間には法律行為、したがつて商行為と目すべき行為は存在せず、さらに本件共同保証人はいずれも非商人であつて商行為の営利性にもとづく商事法定利率に関する商法五一四条を類推適用すべき実質的根拠も見出しえない。それゆえ共同保証人の一人である原告が債務を弁済したことによつて相共同保証人たる被告に対して取得する求償権が当然に商事債権となると解すべきではない。原告の援用する判例は本件とは事案を異にするものであつて原告のこれにもとづく主張は採用の限りでない。
そして、その他本件において右求償権を商事債権であると認めるべき証拠は存しない。
それゆえ、原告の本件求償権の行使について認められる法定利率は商事法定利率ではなく民法所定の年五分の割合であるというべきである。。
三以上の次第で被告は原告に対し金一、六七六万二、〇〇〇円及びこれに対する代位弁済の日の後日である昭和六〇年一月一二日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払うべきである。それゆえ、原告の本訴請求はその限度で理由があるのでその限度で認容し、その余は棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九二条、仮執行宣言につき同法一九六条を適用し主文のとおり判決する。
(東 孝行)
別表<省略>